この記事はこんな人に向けての内容です
・政府による旅行促進キャンペーン施策は、勝ち逃げシニア世代だけがメリットを享受しており不公平。現役世代は報われないと思っている。
・都心まで90分以上かけて通勤しており、満員電車によるコロナ感染が心配。いっそのこと会社の近くに泊ってしまいたい。
・昨今の物価高で外食は極力抑えている。たまにはパアーっと好きなものを外食したい。
税金を使った旅行関連支出の促進キャンペーン
観光庁はGoToトラベルが再開するまでの代替として、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いている都道府県を対象に、観光支援策を財政的に支援をする「県民割」を2022年9月30日宿泊分まで実施している。(2022年8月31日宿泊分までの制度を延長)
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あえて開始時期を明記しなかったのは、様々なサイトを調査したものの、明確な開始時期を示すものが見つからなかったからだ。新型コロナウイルスの感染状況によって、各地域で実施状況が異なっていたのかもしれない。
さて私自身、この手の税金を活用した全国旅行支援施策は好きではない。
私の身の回りで旅行を楽しんでいる方々を見ると、税金による割引があるかどうかが旅行に行く動機付けにはなっていないと思うからだ。むしろ、以前から予算は確保されていて、新型コロナウィルスの感染状況が落ち着けば、自発的に旅行に行ってくれそうだ。
一方、施策の効果が全くゼロだとは思わない。この施策を見て旅行代理店に出向き、旅行を企画される方もいらっしゃるだろう。
旅先限定で利用可能な地域限定クーポンは新型コロナ対策で影響を受けた地域の飲食店や土産物店の経営を支援することになり、一定の価値はある。
私が違和感を感じるのはその原資が税金であること。
施策をフル活用してメリットを最大限享受する人と、まったく利用しない人がいるのはなんだか不公平な気がするのだ。
特に旅行となると、自由時間がどのくらいあるかどうかが重要になる。お盆の高速道路の渋滞情報を見ればわかるが、現役世代は休める時期に制限があるから不利だ。
県民割の制度を細かく読むとわかるが、土日より平日に旅行したほうがクーポンの支援金額が大きい。これも現役世代不利。逆に、平日自由に時間を使える人は施策のメリットを最大限享受しやすいと言える。
遠くに行くことだけが旅行ではない
ここまで読んで残念な気持ちになってしまった現役世代の皆様。ちょっと待ってほしい。遠くに行くことだけが旅行ではない。
我々、旅行というとついつい、以下のような想像をしてしまいがちだ。
しかし、発想を変えてみよう。
自宅から会社の事務所に出勤することだって旅行と言えないだろうか。私は過去、片道90分以上かけて通勤していた時期があったが、これはまさに小旅行だ。電車の乗車時間が長すぎて体調を崩したことも一度や二度ではない。
通勤圏で魅力的なホテルに泊まってみよう
観光庁による観光支援策「県民割」の要件には「通勤を除く」とはどこにも書いていない。旅行というから構えてしまうのであって、たとえ近所であっても、自宅以外に宿泊する際に使ってしまえばいいのだ。
その理由はなんだっていいだろう。
- 会社近くのホテルに泊まって通勤のストレスから解放
- 前から気になっていたちょっと高級なシティホテルに泊まってみよう
- ずっと自宅でテレワークしていて気分が憂うつだから大浴場のあるホテルでくつろぐ
宿泊割引だけでなく、飲食で利用できるクーポンも発行される
そうは言っても、通勤なんかに1円でも無駄な支出をしたくないだろう。そのための観光支援策「県民割」の活用だ。
今回実施中の県民割を通勤で活用する場合、6,000円以上の宿泊に対して3,000円の値引きと、周囲の飲食店や土産物店で利用できる2,000円のクーポンが発行されるパターンが多い。
例)ある宿泊施設の一泊の宿泊費用が6,000円の場合
6,000円(宿泊費用)-3,000円(県民割)-2,000円(飲食店クーポン)=1,000円(実質負担)
楽天トラベルやYahooトラベル、じゃらんなどではさらにポイント付与もあるから、余剰ポイントを使いこなすことによって、全く自己負担なしで会社の近くの宿に宿泊できてしまうかもしれない。
県民割に合わせて、あえて一泊の宿泊プランを6,000円に合わせている宿もあるから要チェックだ。
実際に活用してみた
私自身、8月の通勤時に「県民割」を大いに活用させていただいたので、イメージだけ簡単にご紹介させていただく。
県民割の適用にあたっては、特段どこかの行政機関に出向いたり、旅行代理店に出向く必要はない。旅行予約サイトを利用しただけだ。私の場合は「じゃらん」である。
某上級ホテルだが、県民割の活用で実質3,500円で一泊。
利休の牛タン定食は自己負担400円!
別な利用日にいただいたヒレかつ定食は県民割クーポン利用で完全無料!
通勤のストレスから解放されたし、非日常を感じることができた。その上、美味しい食事をおなか一杯食べることができて大満足だった。
反省点としては、「割引があるから」とついつい高級ホテルを予約したり、飲食店クーポンを利用する際に、美味しそうだからと言って交通費をかけて牛タン屋まで出向き、2,000円以上のメニューを頼んでしまうことがあった。
それって観光庁の狙いにまんまとはまってない?
経済を回すという意味では悪くないでしょう!
利用時の注意点
ワクチン接種証明が必要
宿泊施設のチェックイン時にワクチン接種証明書が求められる。公的機関が発行する接種証明書が必ず必要だ。おすすめは接種証明書アプリだが、紙の接種証明書を持参しても構わない。証明書の提示ができないと、県民割の割引は適用されないし、飲食店クーポンも発行されない。要注意だ。
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チェックイン時に居住地を示す身分証明書が必要
宿泊施設のチェックイン時に居住地を示す身分証明書が必要だ。これは運転免許証で構わない。制度利用の条件に則っているか確認する作業であるから、忘れずに持参しよう。宿泊施設の係員が行政手続きの一部を担っているようなものだ。
東京都の宿泊は対象外
東京都にある宿泊施設は県民割の対象外だ。
従って、県民割を活用して東京に通勤する場合は、すぐ近くの隣の県に宿泊してしまえば良い。例えば、東京の隣の千葉県。江戸川を越えてすぐの新浦安や、少し先の海浜幕張で宿泊してしまえばよいのだ。神奈川県であれば多摩川を越えてすぐの川崎や武蔵小杉、横浜といった具合だ。
なお、東京では別制度として東京都民割「もっとTokyo」が2022年9月1日から実施予定だから、興味がある方は調べてみてほしい。
制度(スキーム)を理解してお得に活用
今回ご紹介した「県民割」を活用した通勤負担の軽減は、要件に合致すれば誰でも活用できるし、少しではあるけれど経済を回すことにもつながる。
新型コロナウィルスの感染状況については全く先が見えない状態だが、国による旅行関連支出の促進キャンペーンは形を変えながら実施されてゆくだろう。
その際、「また勝ち逃げシニア優遇か」「我々現役世代は旅行する暇などない」と簡単にあきらめずに、制度要件をきちんと理解した上で、上手に活用してゆこう。