2024年3月31日更新:2023年4月1日実施の株式分割(1株⇒5株)を反映
- はじめに
- 1単元約200万円の値嵩株だったが、株式分割で1単元50万円程度になり、少し買いやすくなった
- 株主用パスポートがもらえる株主優待制度は超強気設計
- 定期預金並みの超低利回り
- 株主用パスポートと配当金を含めた「優待総利回り」
- 他の優良銘柄に投資して配当金ゲットたほうがマシ
- それでもオリエンタルランド株を単元株で保有する意味とは?
- オリエンタルランド株の株価変動リスク
- まとめ
はじめに
株式会社オリエンタルランドは東京ディズニーリゾートを経営する企業である。
株主優待として「東京ディズニーランド」または「東京ディズニーシー」どちらかのパークで利用可能な株主用パスポートが貰えることから個人投資家に大人気の銘柄だ。
しかし、株式投資について勉強すればするほど、同社への投資は魅力的でないことが分かる。一言で言うと、「コスパが悪すぎる」のだ。ハイリスク・超ローリターン。
1単元約200万円の値嵩株だったが、株式分割で1単元50万円程度になり、少し買いやすくなった
国内企業の株式は通常100株単位で売買される。そのことから、100株を1単元とも言う。
株主優待をもらったり、株主総会へ出席したりすることができるのは原則として1単元以上保有の株主である。
例えば国内企業で時価総額ランキング1位のトヨタ自動車の株価は1株約3,800円。
1単元は100株だから、トヨタ自動車への最低投資額は3,800円×100株=380,000円(手数料別)ということになる。
では、株式会社オリエンタルランドはどうか。
2023年4月1日に株式分割されたため、現在の株価は1株約5,000円。最低投資額は5,000円×100株=500,000円だ。
ちなみに、株式分割前は1株20,000円だったため、最低投資額が200万円だった。
株式分割されて買いやすくなったとは言え、50万円は大金だね。
200万円よりかはマシですけどね。
株主用パスポートがもらえる株主優待制度は超強気設計
分割後の保有数に合わせた新たな株主優待制度は、超強気な制度設計と言わざるを得ない。はっきり言って全く魅力的ではない。
最も安く株主用パスポートをもらうための条件は「100株以上株式を3年以上継続して保有」ということになっている。
つまり、1単元50万円で投資しても、株主用パスポートがもらえるまで3年も待たなければならない。しかも、待った上にもらえるのは年間1枚だけだ。
「3年も待てない。1年に1枚は株主用パスポートが欲しい!」ということであれば500株の保有が必要だから、現在の株価水準だと約250万円の投資が必要。
「いやいや、カップルで行きたいから1年に2枚は欲しい!」ということであれば、2,000株の保有が必要で、現在の株価水準だと約1,000万円の投資が必要・・・
なぜこんなに強気な制度設計なのか、理解に苦しむ。
本気で個人投資家を増やしたいと思っているのだろうか。
そもそも株式投資において、3年間も待つというのは相当なリスクである。
3年後に同様の制度が続いている保証はないし、3年もあれば他にもっと投資活動ができるはず。優待チケットだけのためにこんなに待てない。
定期預金並みの超低利回り
1単元50万円で投資しにくい。株主用パスポートをもらえるまで3年待つとしても、その分たくさんの配当金が貰えるのならばまだ良い。
それでは、株式会社オリエンタルランドの株式を1単元50万円分保有すると、どのくらいの配当金が貰えるのだろうか。
配当金はこの数年の配当実績を見ると中間・期末合わせた年間の配当金で1,000円程度。配当利回りは0.1~0.5%となっており、驚くことにノーリスクのネット銀行の定期預金と大して変わらない。
株主用パスポートと配当金を含めた「優待総利回り」
オリエンタルランド株に1単元50万円を投資すると年間の配当金は1,000円程度。
東京ディズニーリゾートではチケットの変動価格制をとっていることから、株主用パスポートの金額価値を断定することは難しいが、およそ9,000円程度と見てよいだろう。
配当金と株主用パスポートを合計した金額で10,000円程度。
優待総利回りとしては、3年待って株主パスポートがもらえる段階になって初めて2%程度に達する。ハイリスクな株式投資の世界から得られる利回りとしては、残念ながら低いと言わざるを得ない。
他の優良銘柄に投資して配当金ゲットたほうがマシ
株式投資をしたことがない人からすると、配当利回りの相場観が分からないかもしれない。
一般的に配当金目的で投資するならば、配当利回り3%~5%が一つの目安になる。
つまり、同じ50万円を他銘柄で利回り3%で運用するならば、500,000円×3%=15,000円程度の配当金は手堅いのだ。
15,000円あればハイシーズンでもディズニーパスポートを1枚買うことができる。しかも現金は王様だ。15,000円でパスポートを買ってもお釣りがくるだろう。ク〇高い園内の飲食+お土産に活用しても良い。
ディズニーパスポートが欲しいからと言って、オリエンタルランド株にこだわることはない。利回り3%~5%なら魅力的な企業が複数あるし、50万円をオリエンタルランド株に集中する必要はないのだ。様々な業種の企業に投資することで、リスクヘッジにもつながる。
それでもオリエンタルランド株を単元株で保有する意味とは?
1単元50万円で投資しにくい。優待利回りは1%未満の超ローリターン。
これを踏まえてもあえてオリエンタルランド株に投資する意義を考えてみよう。
株主総会に出席できる
株主総会に出席すれば、ディズニー好きからは「かがみん」の愛称で親しまれている加賀見俊夫会長の姿を見ることができるだろう。但し、経営陣と親しく話ができるわけではない。淡々と議事進行を眺めるのみだ。運が良ければ1問くらい質問できるかもしれない。
ミッキーやミニーと一緒にジャンボリミッキーを踊ることはないし、ハッキリ言って面白くない。お土産もないだろう。それでも株主総会に出席したいということであれば、これは一つのメリットである。
株価上昇によるキャピタルゲイン狙い
PER/PBRといった指標の話は今回省略。ただ、各種指標からも同社の株価は既に相当割高である。これ以上、上昇していく可能性は現時点では低いのではないか。キャピタルゲイン狙いなら、中長期目線で永く付き合う覚悟が必要かもしれない。
純粋にディズニーを応援したい
難しいことは分からないけど、とにかくディズニーが大好き。割高でも何でもよいからオリエンタルランド株の購入を通じてディズニーを応援したい。このような純粋な気持ちで同社株を保有するのは個人的にはアリだと思う。ただ、株価値下がりリスクは認識しておかなければならない。
また、ディズニー好きということであれば米国株のウォルト・ディズニー・カンパニー(DIS)の購入も検討してほしい。米国株は1株単位で購入できるから日本円で1株15,000円程度で株主になれる。
本国ヘッドクォーターの株主、ちょっとテンションあがりませんか?
オリエンタルランド株の株価変動リスク
株式投資にはリスクがつきものだ。
オリエンタルランドの株式投資にも当然、リスクがある。ここからは完全に私見になるが、株式会社オリエンタルランドの株価変動リスクについて考えてみる。
最大の株価変動リスクは株主優待制度の廃止
「これだけ大人気の優待を廃止するなんてあり得ない!」と思われるかもしれないが、昨今の株主優待廃止の流れからすると全く可能性がないわけではない。株主優待制度自体、日本独自のもので、米国株には存在しない。株主公平の観点やクロス取引対策から、ここ数年は多くの企業で株主優待制度の廃止が発表されている。
仮に、株式会社オリエンタルランドの株主優待制度が廃止されたら株価大暴落は間違いない。今の株価は株主優待制度で保たれているところも多分にあるとみている。仮に廃止となれば、パスポート数枚分の価値が吹っ飛ぶ事態を覚悟しておく必要がある。廃止発表後に高値で売り抜けるのはほぼ不可能だ。
筆者がアルバイト連続不採用となったエピソードから考える、労働力確保リスク
東京ディズニーリゾートはディズニーのブランド力だけでなく、そのホスピタリティが高く評価されている。
従業員の満面の笑み、全力で楽しませてくれる各種ショーのエンターテインメント性。これこそが、熱烈なリピーター獲得に貢献しているともいえる。
さて、ご存じの方も多いと思うが、ディズニーランド・ディズニーシーの現場はほぼ非正規労働者によって運営されている。株式会社オリエンタルランドのプロパー社員は超エリートであり、ほとんど現場にはいないのだ。
あれだけのホスピタリティを実現するには、若く、元気で、明るく、容姿端麗、報酬が安くても不平不満言わず働く。さらにディズニー流の教育を施すことで、高度なエンターテイナーとしての振る舞いができる非正規労働者がたくさんが必要だ。
それでは、その労働力をどのようにして確保しているのか。
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20年以上前の話。大学生の私は、東京ディズニーリゾートのキャスト(バイト)に応募するため、株式会社オリエンタルランド本社近くにあった、東京ベイNKホールを訪れた。社員による面接はわずか5分~10分程度。当時、面接では精一杯アピールしたつもりだが、結局2回連続で合格できなかった。
ネアカ/ネクラという言葉は好きではないが、もしその2つで私を定義するならば、間違いなくネクラに定義されることだろう。
オリエンタルランドの人事担当者は優秀だと思う。短時間の間に、応募者を不快にさせることなく、ディズニーに必要なエンターテイナーの適性が無いことを見抜いた。
ディズニーはバイトとは言え、働く人を選ぶのだ。
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話は戻って令和の日本。
キャスト募集について、最近では地方でも面接会を実施しているようだ。
ところで、ディズニーで働く適性を持った希少な人材に、どのくらいの報酬を支払っているのかご存じだろうか。
私個人的には時給2,000~3,000円レベルが妥当だと思っている。ところが実際には驚くなかれ、時給1,250円だ。20年以上前とあまり変わらない気がする。以下のURLに時給一覧があるので確認してほしい。
私は「やりがい搾取」だと思う。優秀な人材に時給1,250円しか支払わないなんて日本にとっても損失だ!
若者は一定期間の中で就職等で辞めていくから、現在の運営方式を続けるならば、オリエンタルランドは常に優秀な人材を獲得し続ける必要がある。
千葉県浦安市に毎日通勤可能で、ディズニーで働けるというやりがいだけで時給1,250円でも文句を言わない優秀な人材を今後も潤沢に確保できるだろうか。
ちなみに、この時給1,250円という金額は、JR舞浜駅界隈の一般的なアルバイトの時給をも下回っている。ディズニーのキャストより、一般的な店舗での接客や倉庫での軽作業の方が報酬が高いのだ。
それでもディズニーで働く意味とは何だろう?
生産年齢人口の減少時代に持続可能なビジネスモデルと言えるだろうか。
どこかのタイミングで、人員確保のための大幅なコストアップか、ホスピタリティのクオリティ低下を選ぶことになる気がする。
その他の投資リスク
同社の主力事業は、千葉県浦安市にあるテーマパークの運営である。ディズニーランドを割と近くから見てきた立場から、他にも様々なリスクを感じている。
どの企業にも言えることではあるが、何らかのきっかけで株価下落するリスクは常にある。
- 東日本大震災級の災害。10年以上経過して忘れ去られつつあるが、浦安市の被災状況は甚大であった。同社の場合、代替地でのBCPが困難である。
- 地理的条件から、現所在地における規模拡大は限界がある
- 国内の生産年齢人口(主力ターゲット顧客)の減少⇒労働力確保にも影響
- パーク内の事件事故。昨今話題の迷惑系動画による風評被害
- 日本人が減るなら訪日外国人頼みで事業規模を拡大できるか
- コンテンツはディズニーのブランド力頼み。重要な経営判断は常に本国ヘッドクォーターの意向に左右される。
まとめ
オリエンタルランド株は初心者にはハードル高い上に割高。株主優待パスポートと配当金を合わせた優待利回りについても全く魅力なし。株式投資の様々なリスクを考慮すれば、定期預金の方が全然マシだ。
今後の事業リスクについてはほぼ私の私見で書いているが、右肩上がりの成長は難しいと感じる。
ディズニーパスポートを実質無料でゲットしたいなら他の銘柄に投資し、その配当金で普通にパスポートを買った方が良い。個別株は嫌だという方は、高配当ETFでもOKだ。
ディズニーの夢と魔法に惑わされることなく、冷静に賢い投資判断をしよう。