- 吉野家元常務の不適切発言
- このニュースについて、報道当日に私が考えたこと
- 翌日、吉野家HDの株価はどのように動いたのか?
- 今回の不祥事の影響は?
- 本業への影響度が低ければ、企業不祥事の株価への影響は一時的なものに留まる
- おまけ:社外向けセミナー講師を担当した時の思い出
吉野家元常務の不適切発言
2022年4月18日の日経新聞報道。
吉野家ホールディングス傘下の吉野家は18日、同社の伊東正明常務が外部の社会人向け講座に登壇した際に不適切な発言をしたとして「多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことに対し、深くおわび申し上げます」と謝罪した。若い女性を対象にしたマーケティング手法を「生娘をシャブ漬けにする戦略」などと表現したという。
内容については不適切としか言いようがなく、報道を見た多くの方が不快になったことだろう。
4月18日夜のヤフコメをさらっと見ていても、ひどい有様だ。
- 「ひどすぎる!」
- 「吉野家の牛丼は一生食べない!」
- 「明日の株価は暴落だな!」
昨今のコンプラ強化もあって、このような不祥事に対する組織の対応はかなり迅速になってきている。
報道が出た当日の夜には講座を主催していた早稲田大学が、この常務を講師から外すと発表。そして、翌日の午前中には株式会社吉野家が執行役員及び取締役を解任すると発表した。
吉野家HDの発表資料
https://www.yoshinoya.com/wp-content/uploads/2022/04/19113244/news20220419.pdf
このニュースについて、報道当日に私が考えたこと
- 不適切発言の内容はひどいものだ。
- 早稲田大学はすぐに講師をクビにしているし、翌日以降、企業として吉野家も何らかの動きを取らざるを得ないだろう
- 企業イメージの著しい棄損という観点で、翌朝の株価は下落するだろう
- しかし、冷静に考えてみると、社外講座での役員の不適切発言は、吉野家の本業への影響は限定的ではないか
- 安くて美味しい食事を提供するという企業の本質が変わらないのであれば、一時的に下落した株価は戻すのではないか
翌日、吉野家HDの株価はどのように動いたのか?
株式会社𠮷野家は、株式会社𠮷野家ホールディングスの子会社である。我々が市場で売買できるのは吉野家HD株だ。
前日終値が2,413円だったが、4月19日の株式相場は予想通り下落。3%ほど下げた2,380円台でスタート。9:00~10:00にかけてダラダラと下げ続け、底値は2,323円。
そんな中、11:00頃に株式会社吉野家から当該役員の解任発表が出ると急反発。昼休みを挟んであっという間に2,370円台まで回復した。
今回の不祥事の影響は?
今回は、社外講座での会社上層部の不適切発言ということで、本業とは離れたところでの不祥事だった。そして、その対策が比較的迅速だったため、株価への影響は最小限でとどまったように思う。
仮に、役員を解任せずにダラダラと変な言い訳をするようなことになると、株価も引きずられたかもしれない。
本業への影響度が低ければ、企業不祥事の株価への影響は一時的なものに留まる
企業不祥事が起きたとしても、本業と関係のない内容で、その対処がしっかりしていれば、株価への影響は一時的なものに留まる。
自らの保有株企業で何らかの不祥事が出てきた時、その内容が本業に影響するものなのかを冷静に見定めた方が良い。
今回の件のように、不適切発言の内容が過激だと、パニック売りしたくなる気持ちになることもあるが、そこは冷静に見た方が良いように思う。「二度と吉野家に行かない」という消費者のコメントが見受けられるが、人間、いつまでもこのニュースを覚えているわけではない。
例えば、今から7年前の2015年に起きた「マクドナルド異物混入事件」を詳しく覚えている人はいらっしゃるだろうか。
そして、その内容を未だ詳細に記憶していて、継続してマクドナルドでの食事を一切していない方はどのくらいいるだろうか。(マクドナルドがそもそも嫌いという方は別として・・・)
私はマクドナルドが好きなのでたまに利用しているが、当時を思い出すと事件の影響で客数が少なかったのは、せいぜい3か月程度であり、人々はいつの間にか、あのポテトの味を求めて並ぶようになったのである。
不祥事の対処をしっかりと行ったうえで、本業がしっかりしていれば、影響は段々と小さくなっていくのだ。
おまけ:社外向けセミナー講師を担当した時の思い出
今回の吉野家元常務の発言。社内会議や宴席のような内輪ではこの表現がウケていたのかもしれない。しかしながら社外、しかも大学の有償講座でこれはあり得ない。
今回のニュースとは規模も内容もまったく異なるが、私は過去数回、会社の職務として、社外のお客様を招いたセミナーにて講師を担当させていただいたことがある。
実際、一般のお客様に向けて話をするのは、ものすごい緊張感があるものだ。何しろ、セミナーで出会うのが初めてだし、皆さま年齢も性別も様々。社会の第一線でご活躍されているエキスパートばかりである。
このような場で、内輪受けするようなネタが通用するはずがない。それはもう、講壇に立った瞬間から強烈に意識せざるを得なかった。
会社の中で偉くなるとこの辺の感覚がマヒするのだろうか。他者をリスペクトする気持ちが無くなってしまっていたならば、それは残念なことだ。