- さいしょに
- きっかけ ~70代の父親からの連絡~
- そもそも携帯キャリアショップって何者なのか。
- なぜ、人々は歓迎されない理由でキャリアショップに行くのか?
- そもそもキャリアショップではお客様のスマホを操作できない
- 社会のデジタル化が進むにつれて大きな課題に
- 今のままではキャリアショップの未来は暗い
- 個人向けデジタルアドバイザーを職業化できないか
- キャリアショップはディズニーランド化すべし
- さいごに
さいしょに
この記事は携帯キャリアショップの対応を非難したり、その存在を否定するものではない。むしろ、現場の従業員の方は、組織の方針に従いつつ必死にお客様対応を行っており、本当に頭の下がる思いだ。
なぜ、現場が頑張っているのにも関わらず、お客様に評価されにくいのだろうか。「お客様の期待」と「携帯キャリアショップの位置づけ」にズレが発生しているのではないか。現状分析と私なりの提言を行ってみたい。
きっかけ ~70代の父親からの連絡~
70代になる父親から「スマホを購入するためにキャリアショップに行ったのだが、困っている」との連絡を受けた。要約すると以下のような話であった。
要望
ショップに行った結果
- とにかく待たされる
- データ移行について、Galaxyなら教えるけどiPhoneは教えられないと言われる(インセンティブ絡みか?)
- 個別アプリの設定方法は教えてくれない(そりゃそうだろう)
- 契約時、割高なオプションに加入しないと売ってくれない(あるあるですね)
- 頭金が必要と言われたが計算が合わず、よく分からない。(一般社会とは意味が違うの)
- 勝手にマイショップ登録された(これもよくある)
父親の意見
- 昔はもっと丁寧に教えてくれた(20年前くらいのことを言っている)
- 自動車電話の頃から使っているお得意様に対してこの対応はおかしい!
現場が悪いのではない。これは構造的な問題だ。
程度の差はあれ、日本中でこんなことをやっている。
不幸だし、非効率極まりない。従業員だって、やりたくてやっているわけではないだろう。
元NTTドコモ執行役員の夏野剛さんのような人でも、母親がひどい押し売りを受けたとツイートして話題になった。
これは一部の従業員が悪いとかではなく、構造的な問題と言えるだろう。
幸いなことに父親は契約しないで帰ってきてくれたので、私がAppleストアでSIMフリー版iPhoneを購入。MNPで楽天モバイルに移行し、各種設定を行った。もちろん、WEB上ですべて完結させた。
父は楽天モバイルが1年間無料(契約当時のキャンペーン施策)であることをえらく気に入ってくれた。
情弱と言えばそれまでだが、格安SIM、MNP、SIMフリーといったキーワードを全く知らず、「携帯と言ったらショップに行くもの」という認識だとこうなってしまうのも仕方ないだろう。
「今後、携帯のことは任せる」と言われてしまったが、それはそれで面倒だ。
そもそも携帯キャリアショップって何者なのか。
ドコモショップとかauショップという名前だから、キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)が直接運営していると勘違いしてしまいがちだが、それは違う。
キャリアショップ=携帯キャリアではない。
携帯電話販売代理店が携帯キャリアに代わって運営している。2021年度の業界上位3社は、ティーガイア、コネクシオ、ベルパークと続く。この時点で、一般の人はまず知らない企業名だろう。
携帯キャリアショップの実態は携帯電話販売代理店だ。
これは基本中の基本。
携帯キャリアショップの収入源は?
携帯キャリアショップで実際に現金を支払った経験のある人は少ないと思う。
それもそのはず、携帯キャリアショップの収入源はキャリアからの手数料収入が多くを占める。キャリアからの手数料収入は窓口での手続き内容によって細かく定義されており、基本戦略として、手数料収入を増やさなければ店舗は維持できない。
わずかではあるが、ショップで販売するオプション品の収入もある。SDカードがバカ高いという人もいるが、キャリアからの手数料の他、そういうところで利益をとらざるを得ないのだ。
携帯キャリアショップの営業方針
ここまでくると、なんとなく問題の本質が見えてくる。
キャリアショップの営業方針は、目の前お客様の要望に丁寧に応えることではない。
携帯キャリアから多くの手数料を得られる仕事に目の前のお客様を誘導すること。そして、割高なオプション品をあの手この手のセールストークで販売することである。
ここで、この業界特有の「頭金」という言葉の意味は押さえておく必要がある。
詳しくは下記URLを参照いただきたいが、キャリアショップにおける「頭金」とは単なる手数料だ。残債の一部とかそういう意味は全くない。
これもキャリアショップが少しでも手数料収入を確保するための苦肉の策なのだ。
携帯キャリアから多くの手数料を得られる仕事って?
例えばこのような用件だ。
- 新規契約
- 機種変更
- 料金プラン変更
- 修理の取次
- オプションの追加
MNP転入を含む、新規契約の手数料は高い。
さらに、販売する機種によって機種別インセンティブも設定されている。
冒頭の「Galaxyなら教えるけどiPhoneは教えられない」というくだり。おそらく、データ移行作業自体はショップとしてのサービスだ。キャリアからの手数料が得られないのでハッキリ言ってやりたくない。
しかし、「Galaxy」を販売することで多額のインセンティブが入るのならば、サービスとしてデータ移行を実施したとしてもペイできる。そういった内部事情を垣間見ることができる。(あくまでも推測だが)
キャリアショップ店員がお客様を「クソ野郎」呼ばわりして大炎上したニュース。
手数料収入確保が第一優先となり、本来大切にしなければならない価値観を見失った結果だと思う。もちろん、この従業員の行動は社会的に許されることではないが、ここまで精神的に追い込まれた末端の従業員には同情せざるを得ない。
手数料収入にならない用件で訪問すると露骨に嫌がられる
携帯キャリアショップはボランティア団体ではない。キャリアから手数料の得られない用件に付き合っている暇はないのだ。
例えばこのような用件で訪問しても、最近では断られることが多いのではないか。
- スマホの使い方の説明
- 特定のアプリの操作方法
- 写真の印刷の仕方
- マイナンバーカードを使ってスマホで確定申告をしたい
- Suicaのチャージ方法
- ネット銀行に口座を開設したい
- ポイ活ってどうやるの?
- 雑談
なぜ、人々は歓迎されない理由でキャリアショップに行くのか?
これも冒頭の父親の話にヒントがある。
「自動車電話のころから使っているお得意様に対してこの対応はおかしい!」
そのキャリアを使っているから、キャリアの客だという思いがある。だから、キャリアショップで無料で至れり尽くせりのサービスを受けられるはずだという誤解。スマホの設定をしてもらっても、自分は客だから無料が当たり前だと思っている。キャリアとキャリアショップを同一視している。
一方、キャリアショップ側ではお客様のスマホの設定業務をしても、キャリアから手数料が入らない。ここに完全なる認識のズレが発生している。厄介だ。
本来、我々はキャリアショップで(サービスとして)スマホの設定をしてもらったなら、その分の正当な対価を支払う必要があるのだ。そこで初めて、社会の仕組みとして正常機能すると思う。
そもそもキャリアショップではお客様のスマホを操作できない
今やスマホは個人情報の塊である。
携帯キャリアショップでもお客に代わって操作などできない。何かあったときに責任問題になるからだ。
社会のデジタル化が進むにつれて大きな課題に
既にスマホは一部のマニアが所有するガジェットではない。所有していることが前提の社会が出来上がりつつある。ITリテラシーを保有していようといまいと、現代社会ではスマホを所有せざるを得ないのだ。
例えば新型コロナウィルスのワクチン接種を終えた証明となるワクチンパスポート。
こういったものもスマホアプリとして実装する方向で検討が進んでいる。
では、スマホの使い方が分からないとき、誰に相談すればよいのだろうか。親族に詳しい人間がいたり、親切な友人がいればよいが、そんな偶然に頼る時代は終わったと思う。国民のITリテラシーを底上げする社会インフラが必要だ。そんな重要な役割を携帯キャリアショップに押し付けるのはあまりにも酷ではないか。
今のままではキャリアショップの未来は暗い
現在のキャリアショップは運営の実態と訪れるお客様のニーズが一致しておらず、お客様、運営側、双方が不幸な状態になっている。
残念ながら現在のキャリアショップは情弱相手にあの手この手で手数料収入を稼ぐだけの組織と言わざるを得ない。
では、今後どのような方向性が考えられるだろうか。
個人向けデジタルアドバイザーを職業化できないか
有料でスマホの使い方相談に乗るということを考えた時、もう既にITという枠組みを超えているようにも思える。
ライフスタイルアドバイザー、ライフスタイルコンサルみたいな仕事だろうか。コンサルティングに対して対価を支払う。仕事の種類で言うと弁護士に相談するイメージに近いのだろうか。
2021年1月、総務省が「スマホ乗り換え相談所」(仮称)を試験的に設置する方針を明らかにした。
この動きは歓迎したいが、同時にもっと踏み込んでほしい。この相談所ではあくまでMNPの手続きレベルのサポートを想定している。スマホを活用して国民の生活を豊かにするためのサポートは含まれていないように見える。
日本は「サービスに対して対価を支払う」という文化が薄い。残念だ。
スマホ相談員を資格化し、そのサービスに対して適切な対価を支払うようなスキームがあれば、ぜひ私もその職にチャレンジしたいと思っている。
特定企業が運営するとどうしても民間のサービスに誘導しがちだから、やはり国が税金で運営するしかないだろうか。
キャリアショップはディズニーランド化すべし
東京ディズニーランドを訪れたことはあるだろうか。
舞浜駅を降りてすぐの「ボンボヤージュ」というお土産ショップは無料で入場できる。そして、もう少し歩くとディズニーランドの入り口だ。ワンデーパスポートを購入すれば、内部のアトラクションは乗り放題である。(そのワンデーパスポートがなかなか高いのだが・・・)
これと携帯キャリアショップがどう関係あるのか。
- 紛失、修理受付といった窓口でしか受けられない業務
⇒ボンボヤージュ(無料) - WEBでできる用件や、ライフスタイルコンサルに該当するような用件はすべて入場チケット購入後に受ける。
⇒スマホ設定相談
⇒アプリ利用方法相談
⇒写真印刷
⇒Andoroid⇔iPhoneデータ移行
入場チケットなのか相談単位なのかは制度設計を考える必要はあるが、ポイントはキャリアからの手数料収入以外に、利用者から費用を徴収する仕組みを作ることだ。
この仕組みを入れれば店員はキャリア手数料の呪縛から解放されるので真にお客様のためなるアドバイスができるのではないか。
お客様は費用を支払うことになるので、一見幸せになる要素はなさそうだが、私のようなドケチ野郎は費用を払いたくないから自分で勉強するだろう。
これは安易に人に頼らず、自分で自分自身のスキルを向上させることにつながる。結果として、その人のためになると思う。
例としてディズニーランドを挙げてしまったが、私が言いたかったのはキャリアからの手数料が入らないようなサービスは有料化すべきということだ。
さいごに
色々と分析を行ってきたが、現状のまとめとしては、スマホの使い方やMNPについては自ら勉強し、キャリアショップに行かずに済ませるということが、キャリアショップで不快な思いをしないために必要と考える。そもそも、キャリアショップに行ってはいけないということが結論だ。
なお、携帯キャリアショップについて、よくまとまっている動画がある。内容は結構過激ではあるが、私は好きだ。動画で学習したい人は参考にしてほしい。