- はじめに
- 本当にiPhone12 64GBを1円で購入できた
- iPhone12が1円で入手できるカラクリを理解する
- 通信契約の有無を問わずiPhoneを安く購入できるの?
- たまたまキャンペーンって・・・
- カラクリを知ってから販売店に行くべし!
- 売り手側の1円携帯の販売目的を考える
- 1円iPhoneの買い方
- まとめ
はじめに
日本の携帯電話販売は再び、おかしなことになっているようだ。
かつて、携帯端末と回線契約のセット販売において値引き競争が過熱し、携帯電話端末の1円販売が公然と行われていた時代があった。
これを問題視した総務省が、2019年の電気通信事業法改正で通信料金とスマートフォンの代金を明確に分離することを義務化し、通信契約とセットで端末を購入した時の値引き額も、22,000円(税込)までに制限した。
この取り組みにより、市中から1円携帯は姿を消したかに見えた。
しかし、2022年3月。1円携帯は再び復活した。
「iPhone12 64GB MNPの場合に限り一括1円」
家電量販店やキャリアショップで大々的に宣伝される案件について、本当に1円で買うことができるのか。
ちょうど、子どもが利用しているiPhone7が古くなり、iPhone12を欲しがっていた。そこで、実態調査も兼ねて1円での購入にチャレンジしてみることにした。
本当にiPhone12 64GBを1円で購入できた
2022年3月26日。近所のヤマダ電機にてiPhone12 64GBを1円で購入できた。
購入店舗やその内訳明細は、それを公開することでお店にご迷惑がかかる可能性を考慮し、マスクさせていただいている。どうかご了承いただきたい。
元々の通信契約は某格安SIMだったが、そこからのMNPでauに切り替えることを条件に、iPhone12 64GBが1円となった。
いわゆる「一括1円」だから、本当にその場で1円玉を渡してiPhone12が手に入ってしまった。
携帯販売に詳しい人からすると「契約時に無駄なオプションをテンコ盛りにつけられたのでは?」とか「キャリアのクソ高いプランしか契約できないのでは?」といったことを考えるかもしれない。
しかし、今回は最初の契約こそauの高いプランを契約しなければならないが、翌月からは同じauグループであるUQモバイルに変更可能との条件だ。
iPhoneが1円で入手できる上、翌月からは月額使用料の安いUQモバイルで運用可能となれば、契約しない手はない。もちろん、無駄な有料オプションの強制契約などは一切なかった。
iPhone12が1円で入手できるカラクリを理解する
前述の通り、改正電気通信事業法では通信契約とセットで端末を購入した時の値引き額を、22,000円(税込)までに制限している。
iPhone12 64GBの価格は95,040円(税込)だ。
従って、本来iPhone12 64GBを通信契約とセットで販売する場合、法律上定められた最大値引き額を適用したとして、以下のようになるはずだ。
95,040円(iPhone12 64GB)-22,000円(値引き)=73,040円(顧客負担額)
しかし、ここからが理解が難しいところだ。
「通信料金とスマートフォンの代金を明確に分離した」という建前から、このiPhone12 64GBは通信契約の有無を問わず、販売店側の自主的な営業活動(値引き)として、たまたま73,039円割引するキャンペーンを実施していることになっている。
そうすると・・・
95,040円(iPhone12 64GB)-22,000円(通信契約同時値引き)-73,039円(販売店独自キャンペーン)=1円(顧客負担額)
は!?顧客負担額がたまたま1円になってしまった!
これがiPhone12が1円で購入できる構造だ。
家電量販店やキャリアショップのPOPを良く見ると、わざわざ上記のように22,000円の値引きと販売店独自値引きを分けて表示していると思う。これは「電気通信事業法に則って商売をしていますよ」という言い訳をするには必要な表現なのだ。
通信契約の有無を問わずiPhoneを安く購入できるの?
鋭い方ならこのような指摘をしたくなるだろう。
通信契約の有無を問わず販売店側の自主的な営業活動(値引き)として、たまたま73,039円割引するキャンペーンを実施しているのなら、以下の販売ができるのでは?と。
95,040円(iPhone12 64GB)-73,039円(販売店独自キャンペーン)=22,001円(顧客負担額)
このような指摘はその通りであって、建前上、通信契約をしなくても22,001円でiPhone12が入手できるはずなのだ。
・・・そのように購入したいと申し出て、在庫があれば。
・・・もう一度言う。通信契約をせずに22,001円でiPhoneを購入したいと申し出て、在庫があれば(笑)
実際には通信契約をせずに購入したいと申し出たとたんに、販売店からiPhone12の在庫は「ないことになる」らしい。
「いやー、ちょうどいま在庫がないんですよ。」
「在庫が目の前にある?これはただの空き箱ですよ?」
家電量販店やキャリアショップに行って、通信契約をせずにiPhoneを購入するのは、少なくとも私が複数の店舗を回った感想としては「不可能」と言わざるを得ない。
この事実は総務省も覆面調査を通じて把握しているようだ。
たまたまキャンペーンって・・・
現在行われている1円販売は、22,001円で購入することが事実上不可能な時点で、法律の趣旨からすればほぼ違法なのだが、法律の抜け穴をギリギリ突くような屁理屈がまかり通っている例は身近なところにもあるだろう。
パチンコ店のすぐそばに、たまたま景品を現金で買い取ってくれる店があったり、料亭に入ったら、たまたま仲居さんと恋愛関係に落ちてしまったり。
つまり、そういうことなのだ。
カラクリを知ってから販売店に行くべし!
パチンコに行って、景品の現金化について質問する人は少ないだろう。聞かれたところで店員だって回答に困ってしまうし、気の毒である。
ほぼ違法だけどその実態が黙認されているところでは、相応の振る舞いが必要だ。つまり、全てのカラクリを理解してから行くということ。
野暮な質問は禁止だ。
売り手側の1円携帯の販売目的を考える
なぜiPhone12を1円で売るのか。
3月末に向けて、通信キャリアが1回線でも多くMNPでの移行実績が欲しいからだ。通信契約はいわゆるサブスクリプション型の契約だから、いったん契約してくれれば中長期で回収することができるという算段だ。何とかして通信契約を獲得するため、過剰ともいえる販促金を販売店に渡している。これが実態。
販売店としても1円とは言えノルマがある。最小の手間でノルマを達成しなければならないが、巷で話題の転売人には気を付けなければならない。転売人は通信契約をすぐに解約してしまうから、キャンペーンの趣旨に合わないのだ。販売側としては、本当にその端末や通信キャリアを長く使ってくれそうな客を選んで販売したい。
この点、家電量販店のノジマでは、iPhoneを安く販売するキャンペーンを適用する際、独自の購入審査と称して、顧客情報の調査を行っている。過去の同店での購入履歴であったり、現在の通信契約の契約期間だったり・・・
根掘り葉掘り調査して、iPhoneを格安販売するにふさわしい客であるかどうか、審査しているのだ。ネット上ではノジマ警察と揶揄されるほどだ。
転売を撲滅したいノジマの販売スタンスも分からないではないが、私個人的にはちょっとやり過ぎ感を感じる。というのも、iPhoneの格安販売自体、正直まっとうな商売ではない。お店としてやりたくないのなら、手を出すべきではないと感じる。ノジマとしてやりたいのかやりたくないのか、よく分からないのだ。
1円iPhoneの買い方
さて、「私も1円でiPhoneが欲しい」と思った方へ。
基本はキャリアショップや家電量販店に行ってそのような案件を探していただくしかない。私ができるのはアドバイスくらいだ。その買い方のヒントをまとめておこうと思う。
- 目印は「MNPで一括1円」。「実質1円」はダメ。
- 店頭にキャンペーンチラシがあるかどうかは関係ない。条件次第で隠し案件や隠し在庫はいくらでも出てくる。
- いつでも1円で販売しているわけではない。平日より土日祝日。通常月より年度末の方が、良い案件が出やすい。
- 1円販売のカラクリを理解しておく。余計な質問をしてお店側の心証を悪くしない。
- 回線契約なしで22,001円で買うことは不可能と考えておく。
- MNP予約番号は事前に発行してから出向く。
- 契約に必要な身分証明書を忘れない。
- 自らの責任で即決する。その場で示された販売条件はその場限りだ。(株と似ている)
- お店についた時点で「MNP予約番号発行済み。MNPで安くiPhoneを購入したい」と申し出る。
- お店側の都合もある。どの回線業者が良いとか余計な希望は出さない。
- 販売側から示された契約条件(最低契約期間等)を守る。
- 販売店側も人間である。短時間うちに仲良くなれれば内情を教えてくれるだろう。
- 相性が合わないなと思ったら無理して契約しようとしない。(私は6店舗は回った。)
仕組みを理解することも含め、これらをちょっとでも「面倒だ」と感じるのであれば、あなたは1円でiPhoneを購入すべきではないのかもしれない。
幸い、転売人によって売却された未使用端末がヤフオクや秋葉原でAppleStoreより安く流通している。時間と手間を考えればそれをつかんでしまった方が効率的ともいえる。
例えば、あなたの時間給が5,000円だった場合、10時間かけて仕組みを勉強したりお店を探し回ったりするのであれば、秋葉原で50,000円の未使用品を購入してしまった方が効率的だ。タイムイズマネーである。
程度のいい中古iPhoneを購入したい方はこちらがおススメだ。
まとめ
2022年3月末の期末キャンペーン期間が終了し、iPhoneの1円販売は一見無くなったように見える。
しかしながら、内容によってはiPhoneSEの第二世代であれば1円だったり、1円までいかなくとも、iPhone12 64GBが10,000円ほどの負担で購入できる案件は見受けられる。
正規のAppleStoreと比較すれば、破格のキャンペーンであることに変わりはない。
総務省の指導により、この異常な販売手法がいつ終了するかは分からない。
もしあなたが格安でiPhoneを手に入れたいと思っているならば、今は絶好のチャンスとも言える。興味を持った方は、ぜひ自らの足で動いてみよう。
冷静に考えてみればこの異常なキャンペーンの原資はクソ高い3大キャリアの通信料だ。それらを支払っている善良な消費者が、格安iPhoneキャンペーンを支えていると思うと、この仕組みは、まっとうで持続可能な商売とは到底言えないと思う。
一方で、違った観点から見れば、iPhone12のようなハイスペック端末をばら撒くことで、5G通信可能な端末が増え、マクロでみれば日本全体のITインフラの強靭化に寄与するという意見もある。様々な見方があって面白いものだ。